はじめに
2025年5月、ストレスチェック制度に関する法改正が成立しました。これにより、これまで努力義務とされていた従業員50人未満の事業場にも、ストレスチェックの義務化が進められる見通しとなっています。
厚生労働省では「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル作成ワーキンググループ」を設置し、新たな運用マニュアルを2026年4月以降に公開予定としています。この改正は、単なる制度拡大ではなく、小規模事業場にもメンタルヘルスケアを浸透させるための政策的転換点です。
中小企業にとって「義務化」が意味すること
これまでストレスチェックは「従業員50人以上の事業場」にのみ義務づけられていました。しかし、小規模事業場では人員やコストの問題から実施が難しく、職場のメンタルヘルス対策が十分に行き届いていない現状がありました。今回の改正により、全ての企業が心の健康管理を組織運営の一部として行う時代へと進みます。
中小企業にとってこれは、法律対応のためだけでなく、職場定着率の向上・生産性アップ・離職防止につながる重要な取り組みでもあります。
社労士が解説:義務化に向けて今から準備すべき3つのポイント
① 実施体制を整える
ストレスチェックは、実施者・実施事務従事者の選定が必要です。
中小企業の場合、外部の産業医・社労士・カウンセラーとの連携が現実的です。
🔹ポイント:
実施計画書を作成し、「誰が」「どのように」実施するかを明確にしましょう。
② 実施後のフォロー体制を準備する
高ストレス者への面談勧奨、職場環境の改善提案など、実施して終わりではなく改善につなげる体制が求められます。
🔹ポイント:
面談対応が難しい場合は、外部専門家と連携し、相談窓口を整備するのも有効です。
③ 社内意識を整える
中小企業ではストレスチェック=形式的なアンケートと誤解されがちです。
しかし本来は、職場の課題を見える化し、チームで改善するための仕組みです。
🔹ポイント:
社員説明会や社内掲示を通じて、目的と安心して回答できる仕組みを伝えましょう。
義務化に備えて、社労士がサポートできること
社会保険労務士は、法令遵守と実務運用の両面から、中小企業のストレスチェック体制づくりを支援します。
- 実施計画の作成支援
- 実施事務従事者の外部委託サポート
- 高ストレス者対応の仕組みづくり
- 社内説明用資料・チェックリストの提供
まとめ
ストレスチェックの義務化は、リスク管理から予防と定着支援へと労務管理の考え方を転換させるものです。
中小企業にとっては、従業員の健康を守り、働きやすい職場をつくるチャンスでもあります。
法改正対応に向けて不安を感じる場合は、早めに社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
当事務所では、社会保険労務士としての労務管理の専門知識に加え、産業カウンセラーとしての心理支援の視点も活かしながら、ご相談に応じております。企業の人に関する課題は、制度やルールの整備だけでなく、職場のコミュニケーションやメンタルヘルスへの理解も欠かせません。そのため、当事務所では、法令遵守を前提としつつ、従業員一人ひとりが安心して働ける環境づくりを、人事労務とメンタルの両面からサポートしています。社会保険労務士事務所CareHRまでお気軽にご相談ください。

