もしも、社員に「相談窓口」がなかったら? ― 中小企業に求められる労務リスク管理

職場でトラブルや悩みを抱えても「相談できる窓口がない」場合、社員は孤立し、問題が放置されやすくなります。結果としてハラスメントの深刻化、メンタル不調、離職といった重大な人事課題につながり、最終的には企業経営に大きな損失をもたらします。特に人材確保が難しい中小企業では、社員が安心して相談できる仕組みを持つかどうかが、組織の存続に直結します。

法的な側面から見ても、相談窓口の設置は努力義務ではなく義務です。2020年に施行された「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」では、大企業に対してハラスメント防止措置が義務化され、2022年4月からは中小企業も対象となりました。この防止措置には、社員が安心して利用できる相談窓口を設けることが含まれています。設置していない場合、労働局からの指導・勧告を受けるだけでなく、労災認定や安全配慮義務違反といった法的リスクにつながる可能性もあります。【厚生労働省

また、相談窓口がない企業では、社員が直接SNSに不満を書き込んだり、外部機関に駆け込んだりするケースも増えています。こうした事態は、企業ブランドの毀損や採用活動への悪影響を招きやすく、結果として「人が集まらない・人が辞めてしまう」悪循環を生み出します。

一方で、相談窓口を設置すれば、早期に問題をキャッチして対処することが可能となります。例えば、ハラスメントの芽を初期段階で把握すれば深刻化を防げますし、メンタル不調の兆候を掴めば休職や退職を防ぐこともできます。つまり相談窓口は、社員を守る仕組みであると同時に、会社を守る仕組みでもあるのです。

これからの企業経営では、ハラスメント防止や労務リスク管理は避けて通れない課題です。特に社員50名未満の中小企業においても、形式的な対応にとどまらず、社員が安心して相談できる実効性のある窓口を持つことが、信頼される組織づくりの第一歩となります。

ご不明点などございましたら、社会保険労務士事務所CareHRまでお気軽にご相談ください。


投稿日

カテゴリー:

投稿者: